
投資の対象には様々なものがありますが、対象が何であれ、投資において重要なことは、損切りのタイミングです。
投資の対象となるものが、永続的に利益を生み続けることはごく稀です。どこかで、手放した方がよくなる局面が必ずやってきます。
しかし、投資に不慣れな人間であれば、この損きりのタイミングを見極めることはかなり困難です。特に、不動産投資は、その専門性から損切りの難易度は高めです。
そこで今回は、不動産投資における損切りのタイミングについて、環境や物件の変化といった外的な目安と、投資者の経済的状況といった内的な目安について、解説します。
不動産投資の損切りタイミングは?

まず、不動産投資の損切りのタイミングで、外的な基準としてどのようなものが考えられるでしょうか?ここではそれをまとめていきます。主に以下の4つです。
- 旧耐震基準設計の物件と判明した時
- 大規模修繕等が判明した時
- キャッシュアウトが大きくなると予想される時
- 投資目的を達成できない・困難になった時
旧耐震基準設計の物件と判明した時
まず1つめは、旧耐震基準設計の物件と判明した時です。不動産には常にリスクが伴っています。その1つが、耐震性についてです。
旧耐震基準設計の物件は、現在の耐震基準に比べて、耐震性が劣っています。特に、阪神・淡路大震災以降、耐震性についての重要性が増しています。こうした物件は、現在の耐震基準に合わせた補修をする必要があります。
もちろん、耐震補強を施し、現代にも適応した物件に改修して資産価値を高め、その後も所有し続ける(所有し続ける)という選択肢もあります。
しかし、耐震補強にはかなり大きなコストがかかります。これを払ってまで運用しづける将来の経営ビジョンが見えないならば、即座に手放す方が無難です。
大規模修繕等が判明した時
2つめが大規模修繕等が必要であることが判明した時です。
不動産は、使うほどに劣化していくものです。築年数が長い物件だと、どこかのタイミングで大規模修繕が必要になる場合があります。
例えば、「水回りの修繕」が必要になることがあります。
水回りの修繕とは、トイレ、洗面所、シャワーなどの設備が劣化している場合に、その部分を一新する修繕のことを指します。水回りは、高い水圧がかかっており、劣化しやすい部分です。劣化してしまった場合は、簡単には修繕できません。大きなコストもかかります。
このように、水回りに限らず、修繕に大きなコストが予想される場合には、その物件を手放すタイミングと言えます。
キャッシュアウトが大きくなると予想される時
3つめは、キャッシュアウトが大きくなると予想される時です。
キャッシュアウトとは、一般的に現金の流出額が大きくなることを言います。不動産投資を保有し続けている間に、資金の流出が大きくなるようであれば、損切りとして売却をする方法もあります。
ただし、売却するときには、売却するために仕掛ける広告の広告費や、管理委託費がかかります。物件のローンが残っているならば、それだけでも損が出る可能性があります。
売却するタイミングには、これら売却時の出費を考慮して決める必要があります。
投資目的を達成できない・困難になった時
最後に、投資目的の達成が不可能、もしくは困難になった時です。
これには、周辺人口の減少など、物件の周辺環境の変化が大きく影響してきます。
例えば、近くにあった大学の移転によって、若年層の入居が見込めなくなるケースがあります。ワンルームマンションなどは大きな打撃を受けます。また、大型商業施設の撤退などによって、家族層からの人気が下がり、入居者数が減少するケースもあります。
このような環境変化を背景に、損益分岐点まで家賃を下げても空室が埋まらない事態になった場合には、損切りのタイミングと言えます。
損切に踏み切りたい状況の目安は?

次に、損切りに踏み切りたい状況の目安の中でも、特に投資をしている側の経済状況や投資状況の変化に着目して、いくつかの項目について説明していきます。主に以下の3つです。
- 赤字経営が続いた時
- 投資の失敗が明らかになった時
- リスクが高すぎることが判明した時
赤字経営が続いた時
まず1つめは、投資している不動産物件の赤字経営が続いた時です。
損益分岐点まで家賃を下げても空室が埋まらず、家賃収入が見込めない状況が続く場合には、投資家は物件を売却することで損失を最小限に抑えるべきです。
環境の変化などによって赤字経営に陥ることもありますが、最初から見通しが甘かった可能性も考えられます。特に、投資物件を販売した不動産会社が、契約の際に提示していた家賃収入の予測データは、本当に正確なものだったのか、チェックしておくべきです。
投資の失敗が明らかになった時
2つめは、投資の失敗が明らかになった時です。
もちろん、購入時には予測していなかった物件の周辺環境の変化が、投資の失敗を招くこともあります。しかし、そもそも市価より高い金額で物件の契約をさせられていた可能性も考えられます。
自分が結んだ契約が妥当な額のものだったのか、チェックが必要です。
また、融資の契約が不正だった場合も、明らかな投資の失敗です。悪質な不動産会社を介した投資の場合、このようなリスクも想定しておく必要があります。また時には、融資する銀行まで不正融資に関わるケースもあります。
例えば「フラット35」はあくまで居住用の物件購入の際にのみ使われる融資であり、投資用の物件購入には適用できない、といった融資の基本を押さえておくべきです。
リスクが高すぎることが判明した時
3つめは、自らの結んだ契約のリスクが高すぎることが判明した場合です。
特に、不動産投資会社に怪しい噂があるときには注意が必要です。
悪質な不動産投資会社は、まず価値の低い物件に高値をつけて販売することを目論むケースがあります。そのような物件は、購入してものちのち赤字問題や売却不可問題などに直面し、ただの「負の遺産」として高いリスクを生み出すばかりです。
また、悪質な不動産投資会社ととりかわす契約には、住宅ローンの悪用など契約自体に問題があるケースも散見されます。
上でも述べた「フラット35」の不正利用や、銀行と結託しての不正審査(本来通らないような審査を通し、無理やり投資者にローンを組ませ、物件を購入させる、など)といったケースが過去にはありました。
経営的なリスクのみならず、契約上・法律上のリスクも常に念頭においておくことが大切です。
まとめ

今回は、不動産投資における損切りのタイミングについて、環境や物件の変化といった外的な目安と、投資者の経済的状況といった内的な目安について、解説してきました。
不動産投資に限らず、損切りのタイミングを見極めるのは困難ですが、ここで説明した目安を元に損切りのタイミングを常に念頭におくようにしましょう。それが、不動産投資におけるリスクを回避する有効な手段です。
それでも万が一、リスクの高い不動産投資の契約に巻き込まれてしまった、といったトラブルに見舞われた際には、ぜひ当社団にご相談ください。
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